SCIENCE AGORA

違和感が世界を変える-科学におけるマイノリティのススメ
Ab-128

イノベーションはどんな心に芽吹くと思いますか?

ふと感じた小さな疑問に素直にこだわる、世の中の「当たり前」に「なんで?」と思う、「偉い先生」の説なのに(うまく表現できないけれど)「ちょっと違う」を感じてしまう、そんな心――そうなのです! 今までの科学技術イノベーションは全て、「当たり前」への疑問から始まっているのです。ニュートンのリンゴの伝承を引くまでもなく、科学の出発点には常に、「当たり前への疑問」がありました。

でも社会は、「当たり前」や「偉い先生」を中心に動きがちで、それに合わないと「マイノリティ」と呼ばれます。ならばと、今回のワークショップでは、「マイノリティ」をキーワードにしました。定義は、「多数派・主流派との違いを自覚でき、現状の当たり前に居心地の悪さを感じる人」、そんな気持ちを「社会に活かそう/活かしたいと思える人」といったところでしょうか。であれば、あなたのなかにも「マイノリティ要素」はある・・・。

今回登壇をお願いした日本IBMフェロー浅川智恵子さんは、視覚障がいを持つ研究者として、Webのアクセシビリティー向上に数々のインパクトをもたらす開発を行ってこられました。いわゆる健常者は視覚障がい者に対して、「全盲だからPC画面を読めなくて当たり前」「常に誰かの手助けが必要」といった見方をしがちです。浅川さんが挑戦し続けてきたのは、こうした「当たり前」」の打破です。今、浅川さんは研究を通じて世界中の視覚障がい者のみならず、すべての人々の生活の質(QoL)の向上、未来に向けて様々な可能性を広げることを目標に日々努力を積み重ねています。

もう一人、基調講演をお願いした吉川弘之さんは、東京大学総長、日本学術会議会長、国際科学会議会長、産業技術総合研究所理事長などの要職を歴任されており、多くの人から「マイノリティ」とは思われていないでしょう。しかし、ご本人の意識は全く異なり、常に現状に疑問を持ち、これまで多くの「主流派」と闘い、そして今なお闘い続けていらっしゃるのです。その経験談とともに、自分の違和感がどのように世の中を変えてきたのか、今後どう変えていきたいのか、他ではなかなかお聞きできない話をしていただきます。

お二人の話を聞いて、記憶の奥に忘れかけていた小さな疑問に、それを感じた時の自分に、思いをはせてください。そこに、新しい世界を創り出す最初の一歩、発想や着眼の芽があるのです。ごいっしょに未来を変える種を手に入れましょう!

企画提供者 科学技術振興機構 ダイバーシティ推進
開催日 11/5(土)13:30-15:30
会場 A会場(日本科学未来館)7階 会議室1
形式 ワークショップ
備考

タイムテーブル:

登壇者の紹介

アゴラ市民会議「どんな未来を生きていく? ~AIと共生する人間とテクノロジーのゆくえ」

吉川 弘之(よしかわ ひろゆき)科学技術振興機構 特別顧問
1933年生まれ。東京大学教授、同総長、放送大学長、産業技術総合研究所理事長、科学技術振興機構研究開発戦略センター長を経て、現在、科学技術振興機構特別顧問。その間、日本学術会議会長、日本学術振興会会長、国際科学会議(ICSU)会長、国際生産加工アカデミー(CIRP)会長などを務める。工学博士。一般設計学、構成の一般理論を研究。それに基づく設計教育、国際産学協同研究(IMS)を実施。主な著書に、『ロボットと人間』(日本放送出版協会 1985年) 、『テクノグローブ』(工業調査会 96年) 、『テクノロジーと教育のゆくえ』(岩波書店 2001年)、『科学者の新しい役割』(岩波書店 02年)、『本格研究』(東京大学出版会 09年)などがある。

アゴラ市民会議「どんな未来を生きていく? ~AIと共生する人間とテクノロジーのゆくえ」

浅川 智恵子 (あさかわ ちえこ)日本IBM株式会社 東京基礎研究所 IBMフェロ-
2009年にIBMにおける技術者の最高職位である「IBMフェロー」に日本人女性技術者として初めて任命された。14才のときに視力を失った全盲の研究員として、 障がいを持つ方々の情報アクセス、コミュニケーションの向上に貢献する技術の研究開発に取り組む傍ら、アクセシビリティーの重要性についての様々な活動 に関わる。2013年、紫綬褒章受章。2014年秋より米国に赴任し、カーネギーメロン大学客員教授を兼任中。

アゴラ市民会議「どんな未来を生きていく? ~AIと共生する人間とテクノロジーのゆくえ」

井野瀬久美惠(いのせ くみえ)甲南大学文学部教授・日本学術会議副会長
京都大学大学院文学研究科(西洋史学専攻)博士課程単位取得退学。博士(文学)。追手門学院大学文学部専任講師、甲南大学文学部助教授を経て、2000年4月より現職。専門はイギリス近現代史、大英帝国史、ジェンダー史。2014年4月より日本学術会議第一部幹事、同年10月より日本学術会議第23期副会長として、政府、社会及び国民等との関係を担当。朝日放送番組審議会委員長、公正研究推進財団(APRIN)理事など多方面で活躍中。

アゴラ市民会議「どんな未来を生きていく? ~AIと共生する人間とテクノロジーのゆくえ」

狩野 光伸(かのう みつのぶ)岡山大学 医歯薬学総合研究科 教授・日本学術会議 若手アカデミー 副代表
麻布学園、東大医卒。聖路加国際病院で臨床を経験後、血管・ナノテク・難治疾患を橋渡しする研究を開始し東大ナノバイオ研究拠点教員。分野融合経験から医系研究者の必要を感じ東大医の研究者育成プログラム教員。薬学臨床教育・研究のため2012年から現職、16年より副研究科長。並行して日本学術会議若手アカデミー副代表、グローバルヤングアカデミー執行委員など公的役割も担ってきた。社会における科学の役割と教育を考えている。

開催報告

国際規模の人口移動や気候変動により,国際規模で流行する感染症が身近な疾病になりました。動物から人へ感染する疾病を特に人獣共通感染症といいます。鳥インフルエンザ,エボラ出血熱,ジカ熱,SARS,などはご存じかとおもいます。感染症の発生原因や克服には,基礎医学や公衆衛生あるいは社会構造からの多様なアプローチがあります。本セッションでは,三つの話題とパネル討論を通して感染症に関する最新の知見と取り組みを紹介します。一つは,マレーシア養豚地帯で発生した二パウイルスの被害と防御法開発のための科学者の取り組みです。二つ目は,タイ・チェンマイにおける児童も含む住民を巻き込んだ狂犬病予防プロジェクトの取り組みです。三つ目は,人獣感染症発生の予測可能性の取り組みです。人は感染症といかにつきあっていくのか,共に考えました。討論では,「ワクチン候補が開発されたのに,なぜ普及しないのか?」の質問があり,投資する企業や団体が現れないからであると回答,経済的あるいは社会的アプローチの必要性も強調された。

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