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AIと人間の違いってなんだろう? ―個人背景・主観・カテゴリー付けより―
8C04

AIと人間それぞれに何ができて何ができないのかというのは昨今よく話題にされるテーマであり、これからの社会の仕組みを考える上で、AIと人間それぞれに得意なことを任せるというのは重要テーマとなります。今回はこのテーマを文系・理系それぞれの見方から考える機会をご提供します。
 この出展では、まず人間とAIの根本的な違いとして脳科学では「クオリア」-人文科学では「コンテクスト」-と呼ばれる人間のもつ五感・知覚・主観などの個人的意見やキャラを、AIは持つことできるのかについて、従来の「生意気」キャラを初めとしてさまざまな進化した現代版「シーマン」と触れ合いながら考えます。
 また一般に決まった手順を素早く正確に行うこと(特定のパターン付け下の最適化)はAIの得意な分野とされていますが、「なにを・なんのために・どうやって」行うかAIも決定することはできるのでしょうか。この「フレーム問題」はしいては、AIをベースとする統計や、数は証拠となりえるか(エビデンス)とも関係してきます。
 人間のもつ「個人的歴史・経験」を外付け搭載した新たな汎用AIとその応用を概観することで、AIを人間の友達として共存・共栄していくことを考えてみましょう。

出展者 網野薫菊(九州大学言語文化研究院)沖原理沙(名古屋工業大学)
開催日 11/17(日)10:30~12:00
会場 8階 会議室C
形式 セッション(会議室)
備考

登壇者情報

タイムテーブル:

開催報告

本企画では、人間の主観・判断に関する言語学上の理論を情報学へ応用し、人間らしいAIの開発を皆で考える機会とした。まずアクティビティ「あなたにとっての雑煮とは?」「雪の呼び名」を通してスキーマやプロトタイプといった概念を導入した後に、「eとlのエティック/イーミックな見分け方」クイズを通して、人間知におけるコンテクスト(背景・経験)を考える機会とした。また汎用AIに背景を付加する試みとして乳幼児の発達過程を再現する手法や、脳科学を活用した構成論的アプローチなど情報学からの提案が行われた。社会心理学の視点からは人間における心理的な錯覚やデフォルトの選択による主観の不確かさなどが述べられた。来場者によるパネルディスカッションでは「数学でさえ人間解釈の関わるイーミックなものである」といった意見や「解釈し共有する」というような折衝能力など人間知の特性が述べられると共に、「背景に紐づけられた意見・個性を持ち、判断する」というような人間知を信用しないとの意見も多く、マルチエージェントシステムやdeliberative democracyのような交渉決断システムへの期待が多く出されたことが印象的であった。

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