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2021年11月3日(水・祝)7日(日)

《プレアゴラ》10月10日(日)11日(月)

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No.06-C1011月6日(土)10:00~12:00

ジェンダーの視点から「生き方」を語り合おう

Let's Discuss "Way of Life" from Gender Perspectives

I-URICフロンティアコロキウム「多様性」分科会
“Diversity” Session members from I-URIC Frontier Colloquium

企画概要

"ジェンダー"は、学術分野ごとに解釈や理解度の異なる多義的なテーマです。本企画では、登壇者から、過去から現代に至るまでの"ジェンダー"という概念の変遷やその多面性をお伝えしたあと、専門とする分野や当事者・非当事者の枠を超えて、だれもが自分らしく生きられる「しんどくない社会」の可能性をジェンダーの視点から議論します。

わたしたちを取り巻く生活・社会環境におけるジェンダーの課題と向き合い話し合うことは、ご自身を起点とした課題提起の機会となるだけでなく、それらを解決する提案にも繋がります。専門家-当事者-参加者の垣根を超えた議論を手がかりとした、あらたな視点や課題の発見を期待しています。

"Gender" is a complex concept that is interpreted and understood differently depending on the academic field. In this online event, we first present a topic of conversation by two speakers. They will explain how the concept of "gender" transformed throughout history and explain multifaceted aspects of “gender.” Then we would like to discuss from a gender perspective the possibility of a "comfortable society" in which everyone can live in their own way, regardless of their field of expertise or whether they are facing immediate gender-related challenges.

By facing gender issues in the living and social environment that surrounds you and sharing them with others in this event, we hope that you will have an opportunity to raise issues based on your own standpoint, which could also lead to proposals for solving them. We are eager to discover new perspectives and questions based on discussions that transcend the boundaries of each participant.

登壇者プロフィール

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横山 百合子 ヨコヤマ ユリコ

国立歴史民俗博物館名誉教授

2020年秋後半に開催された歴博企画展示「性差(ジェンダー)の日本史」。なぜ、どのように企画され、何が来館者の心に刺さったのかについてお話しいただきます(10/7に特別展の見所解説新書が集英社インターナショナルから発売されます)。

https://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/project/old/201006/index.html

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ヨ ヘイル ヨ ヘイル

臨床心理士、日本性分化疾患患者家族会連絡会代表、ネクスDSDジャパン主宰

LGBTQなどジェンダーに関わる様々な言葉が知られるようになりましたが、DSDsという言葉をご存じでしょうか。男女の生まれつきの身体の構造に関わるDSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)について、その偏見と固定観念についてお話しいただきます。

https://www.nexdsd.com/

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サリー 楓 サリー カエデ

建築デザイナー、株式会社日建設計NAD室コンサルタント、サイエンスアゴラ推進委員

サイエンスアゴラ推進委員であり、ドキュメンタリー映画「息子のままで、女子になる」主演という立場から、本企画のパネルディスカッションの座長を務めていただきます。

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棚村 政行 タナムラ マサユキ

早稲田大学法学学術院教授、弁護士

法学者でありかつ弁護士でもある立場から、法律・法学のジェンダーと向き合い方や、ジェンダーと深く関わり合う家族というしくみについて、パネリストとしてご意見いただきます。

https://www.waseda-legalclinic.com/introduce/introduce12.html

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横山 広美 ヨコヤマ ヒロミ

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 / 学際情報学府 教授

専門は科学技術社会論。物理出身の背景を活かし、STEAM分野のジェンダー偏在の実情や背景を研究する立場から、パネリストとしてご意見いただきます。

https://member.ipmu.jp/hiromi.yokoyama/yokoyama.html

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河合 佐知子 カワイ サチコ

国立歴史民俗博物館特任助教、本企画提案者、人文知コミュニケーター

平安後期~鎌倉前期女院は多くの荘園を領有していたが、そこからどのような「力」を得ていたのか。このような課題のもと当時のジェンダー格差やそれを克服するストラテジーに注目し、女院の女性領主としての可能性や宮廷社会で担った役割を研究しています。

https://www.nihu.jp/ja/training/jinbunchi/act

プログラム

10:00

企画趣旨と進行紹介、チャット投稿や発言に関するルール説明

10:05

話題提供 横山 百合子

歴博企画展示「性差(ジェンダー)の日本史」こぼれ話

10:20

話題提供 ヨ ヘイル

性分化疾患の視点から考える“性差”

※コメントや質問はチャットで受け付けます

10:35

コメント・質問の紹介

パネルディスカッションの準備、パネリスト紹介

座長:サリー 楓

パネリスト:横山 広美、棚村 政行、横山 百合子、ヨ ヘイル

10:40

パネルディスカッション 「らしさ」とはなにか?

「多様なジェンダー」といわれるが、なにが、どう多様なのか?

「ジェンダー問題」という言葉は、なにを“問題”だとしているのか?

 歴史、社会制度、医療、スポーツ、ミス/ミスターコンテスト、ジェンダーロール・・・さまざまな場面で、なぜジェンダーという切り口が注目されるのか、さまざまな分野の専門家をパネリストに迎え、語り合っていただきます。参加者のみなさんの疑問やご意見は、チャットにお寄せください。非公開の交流時間では、ブレイクアウトルームでご発言いただくこともできます。

11:20

まとめ:だれもが自分らしい「Life」を生きられるように

パネリストから一言ずつ ~交流時間への招待~

11:30

非公開・交流時間(30分)について

 今後の研究や活動につながりそうなトピックスや視点(例:「伝統的」ジェンダー観、歴史から考える「結婚」の 意味、ジェンダーステレオタイプ、変わりゆく「セクハラ」の定義、多様性、性に関する教育、など)をテーマにして、ひきつづき議論します。特定のテーマでの議論希望者が集まった場合は、ブレイクアウトルームを用意します(ファシリテーションの都合上、人数制限をする場合があります)。メインルームは、公開セッションについて自由に語りあえるようにします。交流会の最後に、議論の内容をあらためてみんなで共有し、今後の活動につなげるために、I-URIC分科会とのコンタクト情報をお知らせします。ぜひご参加ください。

 

※セッション・交流時間には下記の方々も参加します(五十音順)

 戸松彩花(生理学研究所、特任准教授)

 野口華世(共愛学園前橋国際大学、教授)

 伴瀬明美(大阪大学大学院文学研究科、准教授)

 

※交流時間の内容は一般公開しませんが、映像やチャットなどを記録し、そのデータは参加者に限定して共有いたします。また出展者であるI-URICフロンティアコロキウムが、教材や報告書の作成、新しい研究テーマの立ち上げといった活動で、個人情報に該当しない内容について引用・編集利用する可能性があることをご了承ください。

出展レポート

企画概要の補足

  • 立場を超えて、ジェンダーに関する課題を発見し合う。
  • 「しんどくない社会」にするために、尊重されるべきはなにかを議論する。

前半:話題提供およびパネルディスカッション、後半(非公開交流時間):ブレイクアウトルーム2室とメインルームで、一般参加者も加えたディスカッション

セッションで話し合った未来像

  • 個人の尊重
  • ジェンダーや多様性の問題と生き方
  • 偏見やバイアスの構造的問題
  • “あたりまえ”だと思ってしまうことによる“差別”助長

セッションでの意見、論点

個人を個人として尊重することよりも、バイアスあるいはステレオタイプというものが、個人の評価に先立つということへの問題意識が共有されました。また、その問題には歴史的、経済的、政治的背景があり、それらをふりかえることの重要性、「あたりまえ」と思い思考停止や、強迫化された概念によるプレッシャーといった問題点が指摘されました。以下、発言の一部を箇条書します。

  • 明治以降、近代国家として国民を統制するためのフレームワークや構造が生まれ、そのなかでジェンダーも管理要素となったが、それがいま生き方の手前にカテゴリーが来ている。
  • ジェンダーもしくはセックス(セクシャル)の解像度を高めることにより、あなたがだれなのか、なにものなのか、ということを考え、生き方の主権を取り戻すことができるのではないか。
  • 自然のものと、人為的なものとを、よく観察し、バイアスを意識することが重要。
  • 男女二元論、男らしさ・女らしさは社会や政治がつくってきたも。それにとらわれて参加の平等や個人の尊厳、競技力や公平さをつきつめた結果こぼれ落ちる人が出るなら、仕組みやルールを再考する必要があるのでは。
  • 性分化疾患への偏見やバイアスでLGBTQのひとたちと一緒くたに論じてきたのは、偏った視点だった。
  • らしさの二元論が強くなり、そこから出て行きたい人たちがDSDにその希望を投影していったことによる、誤解や偏見がある。
  • 境界をゆるがさなければ、というのは、らしさに閉じ込められているからではないか。
  • 科学技術社会論的にも、権力とジェンダーの問題、強烈な二元論に押しとどめることの弊害がある。
  • ダイバーシティ(多様性、自分らしさ)がポジティブな意味でつかわれるが、それが実現できないのはなぜか、社会的構造に焦点を当てることが重要なのではないか。
  • 二元論が三言論になっただけのLGBTQの捉え方ではなく、「サリー楓」という存在を受け入れてもらいたい。
  • オリンピックは、コロナ禍で、開催するのか/しないのかに焦点が当たり、きわめて政治的、経済的な側面で、オリンピックの開催の是非が問われてしまった(多様性にひろがらなかった)。レガシーとして何を残すのか、 “どう変えていく”のか、という議論が欠落しており、LGBT理解増進法の流れが頓挫してしまった。
  • (LGBTQなど)言葉は出回ったが、それがいったい何を意味して、いままでの社会をどう変えていくべきか、目指していくのかは判然とせず、ESG、エシカル消費、SDGsなど、“いいこと”というイメージ先行。
  • (数値)。目標を立てることと、“(理系女子など)増えればいいんでしょ”というのは異なるもので、大人が作っている偏見を、大人がどう解消していくか、の根本議論を忘れ、背景にある構造に思い至らずというのが残念。
  • SDGsはLGBTに言及していない(国連加盟国に、LGBTは罪としている国があるから)ことに対して、日本は声をあげていく立場にあるのではないか。
  • 男女の区別は中国の律令制度に近づく、ということから始まった(当時すでに中国は父権的)といえる。兵役も、土地も、税も、(男女で)ちがう。戸籍はそのためにつくられた。
  • 当時の実体としての日本社会は、区別の必要はなく、名前からも男女はわからない状況が、戸籍をつくり、管理上わかりやすくするために、女という字をつけ、掌握していくとうのがはじまり。
  • DSDの(遺伝学的、生物学的)理解のなかで(例えば)XXYであるとわかったところまでは客観的だったのに、それが裏返って状態を評価するのに、旧態依然のジェンダー観が反映されて実体と結びついていない。
  • 内圧で、という意味では、公民権の獲得当時は“闘争”だった。いまはそこまでではなく、“仲間”もいるように思う。外的な力を内的な力にどう変えていく知恵もあるのではないか。
  • ジェンダー平等を求める世界の動向から目を背け、日本の現状を“あたりまえ”だと思ってしまうことによって、“差別”を助長する方向に進んでしまう、というのは恐ろしい。
  • 歴史的に、いろんな社会に起こっていることをふりかえって考える、ということが、もう内的なもので、これが(新しい社会に)つながっていけばいい。
  • 外的な圧力をいかに内的な力に変えるのか、どこをどう変えていけばよいか、を研究している最中だが、学術の力もあわせて、変えていきたい。
  • 二元論から三言論に移っただけの状態を着地点にしてしまったというのは、問題だろう。歴史研究から今に対して、何を提案するかは難しいが、これまでどう作られてきたのかということが言える。
  • 脅迫化した(二元論的ジェンダー)観念が、「第三の性」を生み出しているのかもしれない。グラデーションで融かしてしまうことで個人をなくすのではなく、ちゃんと個人を見ていける、そういう力が必要なのでは。

セッションで出たキーワード

オリンピックプライドハウス、戸籍、律令制度、LGBT理解増進法、二元論、三言論、脅迫化した観念、数値目標と構造的課題

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