SCIENCE AGORA

人獣共通感染症へのチャレンジ
Ab-117

三件の講演とパネル討論を通して,人獣共通の感染症に関する最新の知見と取り組みについて考えます。
1998年,マレーシアの養豚地帯で脳炎患者が急増して105名が死亡した。原因は,それまで未知であった病原体の出現で,ニパウイルスと命名された。政府による豚の大量殺処分で流行が抑制されたが,国家経済の回復には6年を要し,その原因究明や防御法開発のための科学者の格闘が続けられている。その一端を甲斐講師が紹介する。
従来、感染症予防の公衆衛生は役所が主体となって上意下達方式で行うものが多い。タイ・チェンマイの狂犬病予防プロジェクトでは,チェンマイ大医学部、主要寺院の僧侶、地域住民らが一体となって予防接種や避妊手術を手伝い,また啓蒙アニメにより子供たちを「メディア」にしている。その調査報告を小田講師が紹介する。
人獣共通感染症の病原体ウイルスに着目すると,遺伝子変異の予測、媒介する野生動物や吸血昆虫の移動予測により、感染症発生を予測できる可能性があります。世界的規模の人的交流や物流、地球規模の気候変動が進むにつれ、未来予測型感染症学が必要になります。その構想を水谷講師が紹介する。
パネル討論では,感染症予防の海外協力に関わる実務者なども交えて,人は感染症といかにつきあっていくのか,共に考えます。

企画提供者 日本学術会議科学力増進分科会
開催日 11/5(土)10:30-12:00
会場 A会場(日本科学未来館)7階 未来館ホール
形式 シンポジウム
URL http://web.tuat.ac.jp/~sakaes/
備考 同時通訳あり

タイムテーブル:

開催報告

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登壇者の紹介

澁澤 栄(日本学術会議第二部会員、東京農工大学大学院 農学研究院教授)

アゴラ市民会議「どんな未来を生きていく? ~AIと共生する人間とテクノロジーのゆくえ」

甲斐 知惠子(東京大学医科学研究所感染症国際研究センター教授)
話題「エマージング感染症との闘いー基礎研究と防御への取り組み」
研究室 http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/jikkendoubutsu/top2.html

アゴラ市民会議「どんな未来を生きていく? ~AIと共生する人間とテクノロジーのゆくえ」

小田 光康(明治大学情報コミュニケーション学部専任准教授,明治大学感染症情報分析センター長、ジャーナリスト)
話題「「新しい公衆衛生のかたち-タイ・チェンマイの狂犬病予防」
研究室 http://odazemi.info/ ゼミ活動 http://aroundtherings.jp/

アゴラ市民会議「どんな未来を生きていく? ~AIと共生する人間とテクノロジーのゆくえ」

水谷 哲也(東京農工大学大学院農学研究院教授,農学部附属国際家畜感染症防疫研究教育センター長)
話題「未来を予測する感染症研究-人獣共通感染症への挑戦」
研究室 http://tuat-animal-infection.pnsnet.co.jp/

須藤 靖(日本学術会議第三部会員、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授)

開催報告

国際規模の人口移動や気候変動により,国際規模で流行する感染症が身近な疾病になりました。動物から人へ感染する疾病を特に人獣共通感染症といいます。鳥インフルエンザ,エボラ出血熱,ジカ熱,SARS,などはご存じかとおもいます。感染症の発生原因や克服には,基礎医学や公衆衛生あるいは社会構造からの多様なアプローチがあります。本セッションでは,三つの話題とパネル討論を通して感染症に関する最新の知見と取り組みを紹介します。一つは,マレーシア養豚地帯で発生した二パウイルスの被害と防御法開発のための科学者の取り組みです。二つ目は,タイ・チェンマイにおける児童も含む住民を巻き込んだ狂犬病予防プロジェクトの取り組みです。三つ目は,人獣感染症発生の予測可能性の取り組みです。人は感染症といかにつきあっていくのか,共に考えました。討論では,「ワクチン候補が開発されたのに,なぜ普及しないのか?」の質問があり,投資する企業や団体が現れないからであると回答,経済的あるいは社会的アプローチの必要性も強調された。

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