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開催報告書
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プログラム冊子
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これまでのサイエンスアゴラ
写真や映像でこれまでの様子を紹介します。

2011

セッション報告

開幕シンポジウム

開幕シンポジウム豊かな将来社会をともに「つくる」ために、一般の人々に本当に役立つ科学コミュニケーションを実現する必要があります。科学技術とどうかかわり、何を選択していくか、私たちの判断は将来の社会に対する責任を担っているのです。開幕シンポジウムでは、この趣旨を共有して何をすべきかを論じ合いました。

開幕挨拶 中村 道治(科学技術振興機構理事長)
来賓挨拶 土屋 定之(文部科学省科学技術・学術政策局長)
パネル討論 「伝える」から「つくる」科学コミュニケーションへ
パネリスト 毛利 衛(科学技術振興機構 科学コミュニケーションセンター長)
若松 征男(東京電機大学 教授)
大島 まり(東京大学 教授)
コーディネーター 佐倉 統(東京大学 教授)


話題提供 毛利 衛(科学技術振興機構 科学コミュニケーションセンター長)

話題提供 毛利 衛(科学技術振興機構 科学コミュニケーションセンター長)テーマの「伝える」と「つくる」について、毛利さんは「皆さんに共有感を持ってほしい」と、科学コミュニケーションセンターを紹介して、皆さんと一緒に事業を進めていく側の立場からの話がありました。
研究者が自分の知識を一般の方々に理解してもらう、知識や楽しさを「伝える」という科学コミュニケーションは非常に重要です。アゴラでも多くの企画が出展されています。一方、例えばiPS細胞では、個人的な研究者の知識的なものが伝わればよいという発想から、それが社会に何をもたらすのか、一般市民がどのように受け入れて将来社会をともに「つくる」のか、という広がりも必要になります。これからは、「伝える」とともに、「つくる」へ科学コミュニケーションの範囲を広げていきたいと考えています。
科学コミュニケーションでは、発信する内容や意図が社会において伝わっているか、今回起きたさまざまな問題を解決する方向に役立っているかについても問う必要があります。最終的には、社会をつくっている行政、政治の方々とともに、日本の将来社会をともに「つくる」ことを、それぞれの人が納得感を持って、なおかつ事実をもとに、科学的な考え方で、本当に実現しなければなりません。その中で、科学コミュニケーションの役割が大きいのではないでしょうか。そこに、科学コミュニケーション事業の目的があります。
大切なのは「専門家と一般の人々が集う」ということです。さまざまな地球規模の課題や、私たちが直面している課題があります。ビックピクチャーをもって、これから、「誰が」、「何を」、「どのように」実践したらいいのか、皆さんと考えて具現化して、実際に一緒につくっていきたいと思います。

パネルディスカッション 「伝える」から「つくる」科学コミュニケーションへ

話題提供に続き、佐倉さんのコーディネートでパネルディスカッションが実施され、テーマについて、大震災の課題をふまえて科学コミュニケーションをどのように変えていくかの視点から議論が始まりました。

価値判断・意思決定と市民参加

大島さんは研究者・科学者の立場から、大震災後に研究者としての解釈を求められるようになり、それが多様な解釈のひとつでも、一般市民にはどのように受け止められるかの認識が研究者にも必要になったことを挙げました。佐倉さんは、データから離れず自分の予断や価値観を反映させないことをよしとするという研究者のトレーニングに触れ、これまでの科学者養成だけでは間に合わない要求があると捉えました。若松さんは、解釈を価値判断と言い替え、一人ひとりの「価値判断」と、規制するかどうかの「意思決定」を市民参加の視点から論じました。今までは、行政がお膳立て、専門家が素材提供、政治の場で意思決定となり、この流れの中では市民参加の機会がまだ少ない状況だそうです。一般市民とともに「つくる」コミュニケーションのひとつの形である「コンセンサス会議」が紹介されました。そこでは、利害関係者の参加、専門家の情報提供、熟議の場は用意されており、議論した結果を政策決定・社会としてどう使うかが課題になっています。

将来社会をともに「つくる」ための科学コミュニケーション

将来社会をともに「つくる」ための科学コミュニケーション毛利さんは、「政策や法律に反映させるところまでいかないと意味がない」と思うと、科学者だけでなく、法律や心理学を含む多様な専門家を巻き込んだ展開を論じ、どうつなげるかの専門家も必要になると指摘しました。大島さんも、科学技術、経済、政策など多様な専門家を横軸と考え、ローカルからナショナルへの縦軸への展開につなげることの重要性を述べました。
会場も参加してディスカッションが展開され、価値観の多様性、研究者個人の価値判断と科学者コミュニティの責任、一般市民のバイアス、非常事態と短期的・中長期的な課題の整理など、将来社会をともに「つくる」ための科学コミュニケーションに具体的に取り組む立場から、パネリストとの活発な議論がありました。また、「危機管理だけでなく、科学の本質を忘れないように」と、日本社会で共有すべき問題や、基礎科学の大切さも指摘されました。
パネルディスカッションを通してテーマへの理解を深めるとともに、取り組むべき課題が浮き彫りになり、サイエンスアゴラとこれからの科学コミュニケーションについて、果たすべき役割と具体的な活動を考える機会となりました。

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