出展者インタビュー

JSTインターン生が、サイエンスアゴラの出場者・出展者へのインタビューを通じてサイエンスアゴラの魅力をお伝えします!

ふくしまサイエンスぷらっとフォーム(spff) 岡田努さん

ふくしまサイエンスぷらっとフォーム(spff)の岡田努さんにインタビューしました!spffとは、福島大学や福島県内の博物館などさまざまな機関が連携して科学コミュニケーション活動を行なう組織で、3月末からは避難所・学校などを訪問して科学イベントを開催しています(避難所訪問は大半の避難所が閉所した7月で終了したそうです)。被災地においては、現時点でどのような科学コミュニケーションが求められているのでしょうか?

3.11の震災によって、spffの連携に参加している機関の施設も大きな影響を受けたのではないでしょうか?そのような中でspffが科学イベント開催を始めた経緯を教えてください。
サイエンスアゴラ2009に出展したspffのメンバー。後列左から3人目が岡田さん。spffの連携に参加している機関のうち、福島県内のいくつかの施設は避難所となりました。そのためメディアの報道よりもリアルな被災情報がspffへ入るようになったのです。とはいえ避難所となった施設では避難民の対応に追われ、正直、科学イベントどころではありませんでした。しかしspff連携機関のうち、避難所とならなかった機関の中から、「何か自分たちにできることをしたい」「避難所の人々が抱えるストレスを少しでも和らげたい」という思いが寄せられ、spffのネットワークを利用した避難所訪問を始めるに至ったのです。
被災地における科学コミュニケーション活動において、どのようなことが大切だと思いますか?
ある小学校の体育館で実施した科学教室「無重力を体感しよう」の様子。「細かなニーズを把握すること」だと思います。隣接する他県に比べて福島県では原発事故による被害および風評被害が大きいことが特徴です。建物も壊れず、一見すると被害が無いように見える地域の多くも、いわゆる「放射能汚染」問題を抱えています。ですから科学コミュニケーション活動の助けを必要としている場所も、「避難所」だけではありません。たとえば学校などの教育現場です。建物や設備が壊れていなくても、「放射能汚染」の問題のため、屋外での活動自粛と活動時間の制限が実施されています。特に理科の授業では、動植物の観察や水や土を使った観察・実験ができなくなっています。実施できなくなった理科授業をどのように補てんするかという問題に、学校の先生方は苦慮されています。
被災地への科学コミュニケーション活動を考えている県外の人に、知っていてほしいことなどありますか? たとえば「福島県の小学校へ行ってサイエンスショーを開きたい」という場合、どのような心がけが大切かお考えを聞かせていただけますか?
spffの参加機関でもある福島県農業総合センターは避難所になった。福島大学、ムシテックワールド(須賀川市の科学館)、郡山市ふれあい科学館が協力して開いた科学教室の様子。被災地で科学講座を実施したいとspffへ連絡をくださる方の中には、避難所になっている体育館などに行きたがる方が少なくありません。避難所以外も被災地である、という現実を知って頂きたいです。どのような形の科学コミュニケーション活動であっても、やはり「細かなニーズを把握すること」が大切だと思います。
例えば、単発の講演やサイエンスショーは現時点の学校の教育現場ではニーズがあまりないと思います。
新学習指導要領の下、理科の時間数が増えたにもかかわらず、特に動植物を扱った観察や実験ができない状況であることを考えれば、その代替措置をどのようにすればよいのか、すなわち代わりの教材を提供したり、当該単元の授業の方法を提案したり、屋内で活用できる教材を提供したりと、日常の授業で継続して活用できる支援(物資・アイデア)がほしいのだと思います。
また科学館や科学博物館では、学校生活で自粛された屋外の体験活動を補てんするために、例年以上の数の学校団体を受け入れているものの、土日祝日の県外からの来館者が激減しており、施設の運営にも支障をきたしています。「福島県」の科学館へ県外からボランティアに来てくれれば、福島は安全だという県外へのPRにつながりますし、風評被害の緩和にも少し繋がるものと思われます。
サイエンスアゴラ2011では、福島県への科学コミュニケーション活動の支援を募集するそうですが、来場者の方とどのような形でお話する予定ですか?
サイエンスアゴラでは、一人でも多くの方に福島県の実態を知ってもらい、状況を改善するためのさまざまなアイディア、そして教材やイベントのご支援を頂きたいと考えています。
ブースでは、来場者の方とspffメンバーが被災地の抱える問題や科学コミュニケーション活動の支援についてお話しできるコーナーを設けます。話題となる支援先によって「学校教育」「科学館」「その他」の3つにコーナーを分ける予定です。科学館の担当者や高校教師などさまざまなspffメンバーが各コーナーでお待ちしています。

インタビューを終えて

震災から8ヶ月が経過した今でも、被災地では解決の見通しが立っていない問題がまだまだあることが分かりました。傍目では分からない「細やかなニーズ」を把握すること、そしてそれに応えるために自分にできる科学コミュニケーション活動を考えることが大切なのですね。
みなさんも、福島県で活動しているspffメンバーの人と一緒に、被災地で求められている科学コミュニケーションについてお話してみませんか? 思いがけない名案が舞い降りてくるかもしれません!

出展企画 詳細ページはこちら >> spffふくしま支援プロジェクト ひろげよう!科学のわ!

震災関連の出展はほかにも! >> 特集ページ「震災からの再生」

インタビュアー プロフィール

たくさんの方々にサポートいただきながら、インターン頑張っています!
サイエンスアゴラでみなさんとお会い出来るのを楽しみにしています。

丸尾美奈子

東京工業大学 理工学研究科
物性物理学専攻 松下研究室 修士1年

尾川慎介

東京工業大学 理工学研究科
機械制御システム専攻 中村研究室 修士1年

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