セッション報告
サイエンスアゴラ2011は、過去最多となる194プログラムを集めました。その1つ1つが独自のテーマや視点を持ち、特徴的なコミュニケーション手法を実践することで、全体として多様性に富む場を形成することができました。
ここでは、それらプログラムのごく一部に限られますが、出展関係者の方々からお寄せいただいた報告を共有します。会場での邂逅を楽しみにしつつも、こうした情報交換を通じて、不断に行われるコミュニケーション活動の発展につながることを願います。
その他のプログラムについては、プログラム一覧からリンクしている個別報告ページをご参照ください。
OP「私たちにとって科学技術とは何か~ 震災からの再生をめざして」
- 開幕宣言
- 中村 道治(科学技術振興機構理事長)
- 来賓挨拶
- 合田 隆史(文部科学省科学技術・学術政策局長)
- 基調講演1
- 「新しい社会のあり方~市民として科学技術とどう向き合えばよいのか」
鷲田 清一(前大阪大学総長、大谷大学文学部教授) - 基調講演2
- 「地球環境と人類圏の行くへ」
川幡 穂高(東京大学大気海洋研究所教授) - パネル討論
- 「震災からの再生をめざして」
大西 隆(日本学術会議会長、東京大学大学院工学系研究科教授)
片岡 正俊(東京都立産業技術研究センター理事長)
小林 傳司(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授)
最相 葉月(ノンフィクションライター) - コーディネーター
- 柳下 正治(上智大学大学院地球環境学研究科教授)
討論では少なくとも2つの同意が得られました。市民が科学技術を使いこなす社会を実現するためには、科学とは特別なものではなく、ふだんの生活で論理的、批判的に考えることも科学であるとの認識が大切だということと、社会として解決すべきことは何か、それに対して科学技術はどのような貢献ができるかを真正面から論じ合う必要があるということです。
http://sciencewindow.jp/backnumbers/detail/58
日本社会は科学技術とどう向き合うか(p.06)
http://scienceportal.jp/highlight/2011/111121.html
Mb-53「新たな科学のタネのまき方」
- パネリスト
-
榎木 英介(サイエンス・サポート・アソシエーション代表)
岡田 努(福島大学准教授、ふくしまサイエンスぷらっとフォーム事務局)
平川 秀幸(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター准教授)
横山 広美(東京大学大学院理学系研究科准教授)
長神 風二(東北大学脳科学グローバルCOE特任准教授)
元村 有希子(毎日新聞社科学環境部副部長) - モデレーター
- 縣 秀彦(国立天文台准教授・普及室長)
- 企画委員会セッション報告
- 原田 良信(サイエンスアゴラ2011企画委員、放射線医学総合研究所広報課長)
- Mb-01危ないってどういうこと?―生活の中のリスクと科学リテラシー
- Mb-25アゴラステージ:中高生と語り合う再生可能エネルギー
- Mb-26,Ma-24アゴラステージ:ものづくりマイスター
- Mb-75アゴラステージ:サイエンスショー大集合
Mb-01危ないってどういうこと?―生活の中のリスクと科学リテラシー
- 話題提供
-
原田 良信(放射線医学総合研究所広報課長)「放射線影響に関する情報発信とリスクコミュニケーション」
小島 正美(毎日新聞社生活報道部編集委員)「リスク報道のゆがみは、なぜ生じるか」
楠見 孝(京都大学大学院教育学研究科教授)「リスク認知と科学リテラシー、批判的思考」 - コメンテーター
- 阿南 久(全国消費者団体連絡会事務局長)
菊池 誠(大阪大学サイバーメディアセンター教授) - 司会
- 蒲生 恵美(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会食生活特別委員会副委員長)
研究者、技術者、経営者の素顔に触れ、科学コミュニケーターの妙技を堪能してもらうために、日本科学未来館1階特設ステージにおいて、以下の3つの企画を実施しました。
Mb-25アゴラステージ:中高生と語り合う再生可能エネルギー
- 登壇者
-
渡邉 信(筑波大学教授)
安川 香澄(産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門主任研究員)
髙島 工(産業技術総合研究所太陽光発電工学研究センター主任研究員) - 参加校
- 江東区立第三亀戸中学校、お茶の水女子大学附属中学校、埼玉県立川越工業高等学校
(下村正樹さん:産総研広報部)
Mb-26アゴラステージ:ものづくりマイスター
(小山元子さん:都産技研経営企画部広報室)
- 登壇者
-
出雲 充(株式会社ユーグレナ代表取締役)
荒川 博史(ヤマト化工株式会社取締役社長)
信田 喜代子(株式会社木具定商店代表取締役社長) - コーディネーター
- 清水 綾、佐々木 直理、川口 雅弘、小山 元子(以上、東京都立産業技術研究センター)
Mb-75アゴラステージ:サイエンスショー大集合
横山 一郎(湘南学園中学校高等学校教諭)「鉄の船が浮かぶわけ」
飛田 賀光(日立科学あそび隊)「重さの不思議・体積の不思議」
- Ma-55科学・技術を体験しよう ~産総研ミニキャラバン~
- Ta-21都産技研体験見学ツアー ~ものづくりの世界に触れてみよう~
- Mb-04日本の魅力、再発信!~留学生、研究者とともに語ろう~
- Mb-07科学・技術でわかること、わからないこと
独立行政法人産業技術総合研究所
Ma-55科学・技術を体験しよう ~産総研ミニキャラバン~
下村正樹さん(独立行政法人産業技術総合研究所 広報部)
企画委員会企画「アゴラステージ:中高生と語り合う再生可能エネルギー」にもご協力いただきました。
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
Ta-21都産技研体験見学ツアー ~ものづくりの世界に触れてみよう~
小山元子さん(地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター経営企画部 広報室長)
さらに、「都産技研体験見学ツアー~ものづくりの世界を体験しよう~」では、音響試験設備(残響室、半無響室)、産業用ロボット、デザインギャラリー、X線CT、高電圧試験室を見学コースとし、研究員が装置を動かしながら説明を行いました。特に高電圧放電、音カメラ、残響室など、体験的な見学場所が好評でした。見学受付場所付近には、サーモメータ、サーベイメータを置き、測定体験もしていただきました。
企画委員会企画「アゴラステージ:ものづくりマイスター」にもご協力いただきました。
国際研究交流大学村
Mb-04日本の魅力、再発信!~留学生、研究者とともに語ろう~
山崎功さん(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
日本学術会議
Mb-07科学・技術でわかること、わからないこと
- 話題提供
-
柴田 徳思(日本原子力研究開発機構特別研究員)「原子力と放射線のリテラシー」
本田 孔士(京都大学名誉教授)「健康と医学のリテラシー」
- パネリスト
-
毛利 衛(日本科学未来館館長)
木村 茂光(東京学芸大学教育学部教授)
北原 和夫(東京理科大学大学院科学教育研究科教授) - 司会
- 室伏 きみ子(お茶の水女子大学理学部教授)
http://sciencewindow.jp/backnumbers/detail/58
科学の不確かさとリスクの考え方(p.08)
- Mb-51“FUKUSHIMA”からのイマジネーション
- Mb-52政策形成における科学的助言のあり方
- Mb-00『まち』で取り組む節電・省エネ対策で低炭素社会へ
- Mb-09震災とこれからのエネルギー教育について考える
- Mb-57それって本当? -3/11大震災をテーマに-
- Mb-59サイエンスクライシス ~情報のウラオモテ~
Mb-51“FUKUSHIMA”からのイマジネーション
- パネリスト
-
中西 友子(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
安 俊弘(カリフォルニア大学バークレー校教授)
岩田 修一(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授) - コーディネーター
- 保坂 直紀(読売新聞科学部次長)
まず、岩田さんが、産業革命も情報革命も歴史を動かしたのは科学技術であり、それにともなう負の部分の転換には住民の参加意識が必要だったことなどを示しました。安さんはエンジニアという立場から、今回の事故を整理して解決策を提示していくことが、国際社会の一員たる日本にとって必要なことだとの認識を示しました。中西さんは、科学への信頼と不信、原子力を含む科学技術教育の反省点を指摘しました。会場との間では、除染の際の工学者の役割・社会の役割について、科学者から社会への知識の還元、さらにはユニークボイスという考え方まで議論が及びました。
Mb-52政策形成における科学的助言のあり方
研究開発戦略センター
Mb-00『まち』で取り組む節電・省エネ対策で低炭素社会へ
低炭素社会戦略センター
Mb-09震災とこれからのエネルギー教育について考える
理科教育支援センター
後半のシンポジウムでは、環境・エネルギー研究開発分野の状況、科学技術政策、エネルギー環境教育の現状とあり方、学校での実践事例が紹介され、エネルギーについての正しい理解と判断力を持つことの重要性、子どもたちが自分の力で未来を変えていこうと考えていけるように教育が果たす役割など、教育への期待が語られました。
http://www.jst.go.jp/pr/jst-news/backnumber1201.html
Feature02 震災でどう変わるか理科やエネルギーの教育
http://www.jst.go.jp/pr/jst-news/pdf/2011/2012_01_p10.pdf
http://sciencewindow.jp/backnumbers/detail/58
地震・津波の防災教育から何を学ぶ?(p.14)
Mb-57それって本当? -3/11大震災をテーマに-
理数学習支援部
Mb-59サイエンスクライシス ~情報のウラオモテ~
日本科学未来館
- Ma-17あっ 捨てないで! それで理科遊びをしよう!
- Ma-35人獣共通感染症の克服を目指して
- Ma-40spffふくしま支援プロジェクト ひろげよう!科学のわ!
- Ma-54ロボットのいる街角を目指して
- Ma-59女性研究者最前線!~資生堂 女性研究者サイエンスグラント~
- Ma-99「きみたちの魔法-化学『新』発見」展
- [来場者特別賞] Ma-01『えれめんトランプ』元素周期表カードゲームで対戦!
Ma-17あっ 捨てないで! それで理科遊びをしよう!
雨谷俊彦さん(蔵前理科教室ふしぎ不思議)
以後、教室では身近な材料で工作と実験を行い、生徒全員が達成感を味わえるように生徒5~6人に1人の助手を配して行っています。主に首都圏や大阪地域で中心に活動し、今年度末には累計で1,065教室、27,000名の児童・生徒に対して行う予定です。
今回の東日本大震災の被災地域で役に立てる事を何かをしたいと多くの人が思っています。私共も被災地域での理科教室の開催を検討しましたが、状況的に厳しい中、サイエンスアゴラの企画を知り応募しました。テーマとしては身近な材料で工作と実験をして、更に説明を1つ加えることで人間の素晴しさに気が付いてもらうという観点で、くらりかのメニューから"笛と音"を選び、会場の雰囲気を考慮して行いました。会場では家庭からごみとして出されるペットボトル、牛乳パック、ストローを用いて紙ホイッスルやストロー笛を作り、鳴らし、なぜ音が発生するかを学んでもらう教室としました。中学生以上には聴覚のメカニズムも説明し、人間の不思議な能力・強さを再認識してもらいました。またクラドニの装置やクントの装置で膜振動や音を可視化したものを見て、それらの美しさを知ってもらいました。私共はいずれ被災地でも同様の教室を開き、今回の参加者以上の感動を与えたいと思っています。
http://sciencewindow.jp/backnumbers/detail/58
これからの科学コミュニケーション(p.16)
Ma-35人獣共通感染症の克服を目指して
伊藤公人さん(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター 准教授)
パネル解説では、自然界で野生動物と共生している微生物がどうして人に病気を引き起こすのか、また、その予防にはこれからどんな研究が必要であり、いま北海道大学がどのように研究に取り組んでいるかを8人の研究者がマンツーマンで来場者に説明しました。
顕微鏡では、蚊やツェツェバエなどの吸血昆虫の標本を観察し、マラリアやアフリカ眠り病といった節足動物により動物から人に運ばれる感染症を解説しました。また、インフルエンザウイルスが感染した細胞を高倍率の顕微鏡で観察することにより、ウイルスが増殖する仕組みやワクチンや治療薬で病気が治る仕組みの一端を紹介しました。
実験体験では、マイクロピペット・遠心機・安全キャビネット・オートクレーブ・防護服といった、感染症を安全に研究するために工夫された最新機器をブースに持ち込み、実験の基本操作を来場者に体験してもらいました。
特製ウイルスストラップの助けもあり、二日間の展示で合計480枚のアンケートを回収することができました。来場者には顕微鏡観察、遠心分離、防護服試着が人気でした。本出展にあたっては、順天堂大学医学部、大分大学医学部、東京大学医科学研究所、帯広畜産大学原虫病研究センター、国立感染症研究所、JSTイノベーションプラザ北海道の関係者の皆様に多大なご協力を頂きました。心より御礼申し上げます。
Ma-40spffふくしま支援プロジェクト ひろげよう!科学のわ!
岡田努さん(福島大学准教授・spff事務局)
しかし3.11 以降は状況が一変しました。本県は地震と津波被害に加え原子力発電所の事故により全県民が放射線に対する不安の中での生活を余儀なくされました。spff の参加機関では施設は閉館、震災対応に追われ、予定していた活動も中止せざるを得ませんでした。震災の2 ~ 3 週間後、spff の参加機関から「spff が避難所でできることがあるのでは?」との声をいただき、その後協力して避難所訪問を始めました。全国からも産総研関西センターを筆頭に科学ボランティアの支援を頂き、GW まで県内の避難所、学校や再オープンした科学館等20 数か所をまわりました。このような非常事態に迅速に対応できたことはspff にとっての誇りです。今年のサイエンスアゴラのテーマが「新たな科学のタネをまこう-震災からの再生をめざして」ということで、私たちはspff の震災後の活動紹介と、意外と知られていない学校の理科授業の課題、科学館の状況、そして本県の実態を来場者の皆様へ対話を通して伝えることにしました。その結果オリジナル福島県付箋紙になんと500 以上もの応援メッセージを頂きました。一人ひとりと丁寧な対話を通して何かを伝える、共有するということがコミュニケーションの基本だと改めて実感しました。今回の受賞、全国の皆様からの支援の声、そしてなによりspff のメンバー同士の理解がより深まったことを本当に嬉しく思います。アゴラ関係者の皆様にお礼申し上げます。
出展者インタビュー にもご協力いただきました。
http://sciencewindow.jp/backnumbers/detail/58
“伝える”から“つなげる”へ(p.10)
Ma-54ロボットのいる街角を目指して
神田崇行さん(株式会社国際電気通信基礎技術研究所 知能ロボティクス研究所(ATR IRC))
とはいえ、ロボットを実際に動かすのはまだまだ大変です。京都から東京まで移動する間にロボットの調子が悪くなってしまったり、いざ到着すると予想していた環境とは少し違っていたり。問題を解決してもう大丈夫と思って最後に確認したら、新しく別の問題が出てしまう、といったことも。それでも、皆さんにロボットと実際に触れ合って楽しんでもらおうと、研究者の皆さんが未来館の中で直前まで調整作業を頑張ったことで、当日は無事にロボットの展示を皆さんに体験してもらうことができました。特に小さなお子さんたちには、自分たちと同じぐらいの大きさのロボットを見ることが初めてだったようで、とても楽しくロボットと触れ合ってもらうことが出来たようです。これからも、人と関わりあうロボットの研究開発を通じて、少しでも皆さんに科学の楽しさを伝えることができればいいな、と思っています。
Ma-59女性研究者最前線!~資生堂 女性研究者サイエンスグラント~
蓑田裕美さん(株式会社資生堂 学術室、国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータ)
これがサイエンスアゴラ出展を思い立ったきっかけです。
日本の科学界における女性研究者の比率が世界最下位クラスであることをご存知でしょうか。「資生堂 女性研究者サイエンスグラント」ではその格差解消の一助となるよう、指導的研究者を目指す女性科学者に毎年総額1,000万円の研究助成を行なっています。女性研究者支援を通じて、今後さらに日本の科学技術の進展に寄与するためには、第一線で活躍している女性科学者の姿を市民の皆さんに知っていただくことが重要なステップであると考え、サイエンスアゴラ2011への出展を決めました。
歴代受賞者の研究ライフを紹介する展示と、受賞科学者をゲストに招いたサイエンスカフェ形式のトークイベント、どちらも数千人の来場者の皆さまとFace to Faceでお話できる貴重な機会ですので、インターネットや書籍のようなメディアでは得られない"ライブ感のある科学コミュニケーション"を目指しました。当日は予想以上に男性の来場者にもお立ち寄りいただき、「企業が事業分野に関連しない科学全般を支援しているとは知らなかった、心強い」などのコメントや貴重なフィードバックを沢山いただきました。
企画運営の実務担当者はサイエンスコミュニケータ1名でしたが、ゲスト受賞者の細谷紀子先生をはじめ多数の受賞者にご協力いただき、当日スタッフもみな社員ボランティアが務めました。こうして一丸となり「女性科学者を応援したい、日本の科学界を盛り上げたい」という同じ想いを持つことこそが支援の第一歩であり、このたびのサイエンスアゴラ賞受賞に繋がったのだと思います。サイエンスアゴラが、科学を切り口としたコミュニケーションの場として、今後益々活用され発展を遂げることを強く願っています。
出展者インタビュー にもご協力いただきました。
Ma-99「きみたちの魔法-化学『新』発見」展
太田暉人さん(公益社団法人日本化学会 前常務理事)
一言で化学を展示するといっても容易ではありません。通常の化学反応の展示には困難が伴います。そこで、温度や光で可逆的に変化する材料に焦点をあてることにしました。そうした材料のメーカーに協力のお声がけをしたところ、幸いにも声をかけたほんどの企業から協力を得ることができました。さらに日本化学工業協会加盟の企業からも協力の申し出が頂きました。
展示制作にあたっては、化学の不思議さ、面白さをどのようにして印象づけるかを、メンバーの間で議論しました。特に、参加者が直接手を触れられる体験型とすることを基本としつつ、耐久性と安全性をいかに確保するか、また個々の展示に係員が張り付いていない状況下で、参加者にこちらが期待する操作をさせるにはどうすればよいかが最も工夫を要するところでした。
また、体験展示に加えて、化学が如何に我々の現在の生活に密接に結びついているか、そして我々の将来を担っているかをイメージしてもらえるチャートも作成しました。静止画の上に映像を投影する手法で、化学の役割、リサイクル、将来の姿などを現したものです。会場の一角に大型ディスプレイを置き、ミクロの世界の写真をスライドで映し出す工夫もしました。
おかげさまでみなさまから好評を博し、賞までいただき、苦労したかいがあったと喜んでいます。
Ma-01『えれめんトランプ』元素周期表カードゲームで対戦!
栫井文子さん(株式会社化学同人)
昨年は『えれめんトランプ』の原型はあったものの、まったく1からのスタートであった。考案者を交え、「カードの見栄え」「ルールのわかりやすさ」「説明のしやすさ」など、さまざまな要素を検討しながら、カードをつくりあげていく過程は、科学書をつくる編集プロセスとまったく変わらない。そんな昨年とは違い、今年は『えれめんトランプ』がすでに完成していたため、少し余裕をもって取り組めた(とはいえ、別企画『元素検定』を並行して準備していたため、大変だったわけであるが)。
おかげ様で昨年の『えれめんトランプ』ブースは大変な賑わいであった。それ以上に盛り上げたいとの思いもあり、学びの要素を取り入れた簡単なミニゲームなども用意していたが、結局、オーソドックスな『えれめんトランプ』が1番面白かったようである。
今回350名ほどの方に体験してもらったが、中にはリピーターや昨年来てくれた高校生の姿もあった。年齢も幅広く、小学生以下の子どもから、70過ぎのおじいさんまでが一緒に楽しんでいる様子に、この企画に携わった者として感動すら覚えた。『えれめんトランプ』が子どもたちの知的好奇心を刺激し、科学を楽しむ心を育てる「種」となってもらえたらと思う。
ほかの出展者との交流という意味でも、サイエンスアゴラは非常に有益な学びの場となった。これからもこのような機会があれば、積極的に参加していきたい。
- Mb-02東日本大震災後の海洋汚染の広がりとその影響
- Tb-03経済学×脳科学 質問から読み解く「あなたの好み」?
- Sb-10若手サイエンスコミュニケータ進路相談&交流会
- [特別賞] Ma-57,Mb-27,Mb-76ロボット楽団コンサート~科学はどこまで音楽に近づけるか
Mb-02東日本大震災後の海洋汚染の広がりとその影響
市川洋さん(独立行政法人海洋研究開発機構)
出展者インタビュー にもご協力いただきました。
Tb-03経済学×脳科学 質問から読み解く「あなたの好み」?
内田麻理香さん・水島希さん(東京大学情報学環 佐倉研究室)
「『経済学×脳科学』質問で読み解くあなたの『好み』?」は異分野同士をかけあわせたイベントである。異分野と思われているが、経済学と脳科学には「神経経済学」という活発な学際領域があり、主催である文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムでも研究が進んでいる。
脳科学と経済学、縁が遠いほうの分野についても面白さを伝えるにはどうしたらよいか? そこで、参加型のイベントにし、さらにエンターテインメント性を重視することにした。
登壇者の大竹文雄氏には「経済学者」、田中沙織氏には白衣を着た「脳科学者」、そして佐倉統氏には進行と役をふり、コント風のシナリオを用意した。
参加型の仕掛けとして、アンサーパッドという質問回答用機器を用意した。例えば「どちらを選ぶ? (A)100 万円が11% 、はずれが89%(B)500 万円が10%、はずれが90%」という質問に、参加者が手元のアンサーパッドで(A) か(B) の回答を選び、ボタンを押す。すると、全員の回答が集計され、スクリーンに表示されるという仕組みである。
当日、このアンサーパッドは大活躍し、お客さんは自分の答えのゆくえに興味津々で、画面に注目していた。さらにその回答から読み解かれる自分の「好み・傾向」についての解説に聞き入った。フロアからの質問が活発だったのも印象的である。
この経済学と脳科学のコラボレーションによる知的エンターテインメント。サイエンスアゴラ賞・対話部門を受賞したのは、参加者をはじめ、関係者の皆様のおかげである。この場を借りて深くお礼を申し上げたい。
Sb-10若手サイエンスコミュニケータ進路相談&交流会
熊谷現さん(ウィークエンド・カフェ・サイエンス(WEcafe)事務局)
私たちWEcafe事務局は、普段は、月一回程度の頻度でサイエンス・カフェを開催している団体です。一般財団法人 武田計測先端知財団の支援をいただきながら、国立科学博物館の認定サイエンスコミュニケータを中心に、20代の大学院生・社会人がボランティアで企画・運営をしています。
メンバーの中には、いずれは独立してサイエンスコミュニケータとして稼いでいきたい、と考えている人もいます。ただ、いわゆる「サイエンスコミュニケータ」のキャリアモデルとなる方はほとんどいらっしゃらないため、どのような道筋を描けばよいかがわからない、という現状がありました。
そこで今回の企画では、様々な場所でサイエンスコミュニケータとして活動を始めた若手の方を登壇者としてお呼びし、パネルディスカッションを実施することといたしました。今、まさに奮闘している方が何を考え、どう行動しているのか意見交換をすることで、道を切り拓くヒントが見えてくるのではと考えたからです。
当日は大雨にもかかわらず、40名以上の方にご参加いただきました。その後の希望者のみの交流会にも17名の方にご参加いただき、参加された方のつながりづくりの場ともなれたと感じています。
当日の議論では、「非営利活動の意義を認めてもらうためには、評価軸をこちらが提示する必要がある」「単年度の国の補助金だけでは、利益を出せず持続的な活動が難しい」「職能であると認識して、個々の職場で活躍することを目指しては」など、様々な意見が出ました。今回のシンポジウムを踏まえ、今後も、悩み、試行錯誤を続けながら、行動をしていきたいと考えています。
Ma-57,Mb-27,Mb-76ロボット楽団コンサート ~科学はどこまで音楽に近づけるか~
幸田晃さん(鹿児島工業高等専門学校 教授)
ロボット楽団のコンセプトは「見て楽しいステージ」です。音楽をきちんと演奏することは必須です。音楽が始まると各ロボットがザワザワ動き出し、まるで遊園地のようなステージを目指しています。個人で頑張っているのでなかなか到達できていませんが。加えるにロボットにはカバーを付けず、動きの仕組みを見せて興味を持ってもらい、素人の方にもわかるようなローテクを使い、「私にもできるかも」と思っていただければ幸いです。ちなみに私の専門はコンピュータの音声信号処理であり、ロボット製作は全てゼロからのスタートです。ですのでロボット技術のハイテクを使えと言われても無理かもしれません。今回参加させて頂き、出展者皆さんが本気になってサイエンスをエンタテイメントとして伝えようとされているのに感動しました。私も勿論本気なのですが多種多様な分野で皆さんが頑張っておられるのを見ると、「日本の底力」を垣間見ているような気がいたしました。
http://sciencewindow.jp/backnumbers/detail/58
これからの科学コミュニケーション(p.16)
サイエンスアゴラ賞についてサイエンスアゴラ2011では初めての試みとして「サイエンスアゴラ賞」を設定して、企画内容の向上や科学コミュニケーション理念の促進を図りました。
サイエンスアゴラ賞には、「楽しいサイエンス部門」と「サイエンス対話部門」の2部門を設けました。「楽しいサイエンス部門」ではサイエンスに対する人々の興味関心を広げることに貢献しうる優れた企画を、「サイエンス対話部門」ではサイエンスと社会との関係についての議論を促進する優れた企画を選定しました。選定にあたっては、10名の審査委員が「手法」「実施内容」の観点から審査を行い、その結果をもとにJSTが受賞企画を決定しました。また、来場者人気投票で最上位となった企画には「来場者特別賞」を授与しました。
サイエンスアゴラ賞一覧はこちら >> サイエンスアゴラ賞 発表